黒木工吉のフィギュアスケート解説ブログ

フリーライター黒木工吉のフィギュアスケートに関するブログです。最新の技術解説、選手の情報からフィギュアスケートというスポーツ全体まで様々な角度から論じてみます。

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浅田真央の革新⑦ 2009-2010FP『ラフマニノフ前奏曲Op3-2 鐘』





【前回のつづき】

ジャンプの要素がヴァランスよく配置されていることがなぜこれほどすばらしいことかというと、単純にそれがなかなかできないことだからだ。ジュニアの選手においては、このようにSPでヴァランスの良いプログラムで滑ることはある。しかしシニアに上がった選手はジュニア時代と比べ物にならない次元で、勝つことを自らに強烈なプレッシャーとして課さなくてははならない。ジャンプというのはもっとも神経を使う要素であり、体力の充実している冒頭に固めたい、というのは自然なことであるし、それはアスリートの生理的な部分と言っても良い。

技術的な充実はプログラムのクオリティと直結すると、わたしは考える。わたしは何度かこのプログラムを見ていて、「あれ?単独のトリプルフリップ跳んだっけ?」とふと疑問に感じることがあった。単純に考えてジャンプの印象が薄いというと、一見悪いことのように思うかもしれない。しかしフィギュアスケートのプログラムをひとつの作品としてとらえた場合、それは音楽と要素が調和していて、その音楽世界に入り込めたということでもある。これはきょうびのフィギュアスケートにおいて、なかなかあることではない。残念なことではあるが。

当時キム・ヨナ選手はジュニアからシニアに上がった、ひとつシニアとして今後どのような評価を受けるかを問う勝負の年であった。そのような情況で、このプログラム構成は強靭な精神力を試されるとわたしはそう考える。それゆえわたしはこの『タンゴ・ロクサーヌ』のプログラムを高く評価している。

しかしながら、確かにこの年の世界選手権SPでキム・ヨナ選手はトップに立ったが、こういった構成の素晴らしさがどれだけ評価されているかは、正直なところは分からない。それどころか、余り評価の対象になっていない気すらする。

当時このSPは世界最高得点を叩き出したが、それ以降の、つまり構成が標準的なキム・ヨナ選手のSPと比べて、とりたてて演技構成点が伸びたというわけではないのだ。比較できないのがこの手の議論の難しいところで、例えばジャンプを前半にもってきた『死の舞踏』においての評価も同様かそれ以上に高いものであったり、今シーズンの『007』においても、同様に評価は高い。

かようにプログラムそのもの素晴らしさというのは、いくら新採点方式で厳密に点数化されるに至っても、やはり観る者それぞれの価値観に頼ってしまう部分が大きい。当然のことかもしれないし、それで然るべきなのかもしれないが、難しいことに挑戦しているという意味では浅田選手の『鐘』のプログラムの濃密さと『タンゴ・ロクサーヌ』のプログラムのヴァランスの良さも同じであるとわたしは考える。それがどれくらい評価に結びついているのだろう?そう考えると、すこし歯痒い気持ちになってしまうのは、正直な感想である。

(つづく)

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